金庫の基本。金庫の種類や性能など選ぶ際のポイントをご紹介
近年、夜間や休日など無人化した店舗・オフィスを狙った大胆な金銭略奪などの犯罪が頻繁に発生しています。また個人宅でも盗難の危険だけでなく、火事や自然災害を含めると財産の消失のリスクは増加しているといえます。これらの被害から財産を守る設備のひとつとして挙げられるのが金庫。今回は一般家庭にも身近な金庫と、その選び方をご紹介します。
金庫の基本と、金庫を持つメリット
家庭に金庫を置くのは大げさと思えるかもしれません。しかし、どんな家庭にも金銭だけでなく、貴金属や宝石、大事な書類や機密情報、思い出の品など大切なものが存在するはず。それらが見られたり盗まれたりすることを防ぐというだけでも、簡単に開けられない金庫の必要性は言うまでもありません。
さらに、日本は世界でも有数の自然災害大国です。地震による出火や昨今の異常気象にも見られる水害、それら不可抗力による災害だけでなく、放火や失火・延焼など、大切なものを火災や災害から守る必要もあります。
その証拠に、現在、世に出ている金庫はその目的で大きく「耐火金庫」と「防盗金庫」の二つに分けられます。大切なものを火災から守る「耐火金庫」と、盗難から守る「防盗金庫」で、火災・盗難は金庫を持つ理由でもあり、それらから守ることは金庫の大きな目的かつメリットです。
金庫の種類
耐火金庫は文字通り、火災から大切なものを守る金庫です。住宅火災の約半数は放水開始後30分以内に鎮火されており、火災発生から約2時間、庫内の温度を紙が焦げる手前の温度177度以下に抑えるJISの「標準加熱試験」に合格することが「耐火金庫」のひとつの基準となっています。
また最近では、耐火金庫でも防水・耐水性能に優れたものが多く見られます。昨今の異常気象での浸水や水没被害を意識するだけでなく、火災時においても消化のための放水やスプリンクラーによる大量の水を浴びせられる可能性があります。防水性や耐水性を備えていれば、なお安心といえるでしょう。
防盗金庫は、盗難から大切なものを守るためにより頑丈に作られたものです。電動ドリルによる鍵穴や表面の破壊に耐えるものや、万一ダイヤル錠や電子錠が破壊された時も装置が作動しカンヌキが掛かった状態を保持する機能、持ち去りやこじ開け行為による衝撃や振動に反応して警報音を鳴らすものなど、盗難を防止するさまざまな機能が装備されています(※防盗金庫は、耐火性能も備えたものを指しますが、耐火性能を持たない「防盗庫」もあります)。
金庫を選ぶ際のポイント
金庫を選ぶ際は、使用場所、用途、収納物、性能などで選ぶとよいでしょう。
金庫の使用場所
使用する場所によって金庫選びは変わります。オフィスや店舗は、金庫を多人数で使用する環境であり、多人数登録や使用状況を明確にするロックシステムが求められます。また金庫の重さに耐えられる場所かどうか、持ち去り防止のために床に固定できるか、火災発生のリスクなども考えて検討しましょう。
金庫の用途、収納物
何を収納するのか、金庫の用途も考えましょう。書類であれば、火災や防水を意識する必要がありますし、紙の大きさにより、金庫のサイズも異なります。貴金属や宝石の場合は、それぞれが耐えられる温度があるので、庫内の温度を一定以下に保てるものが必要です。さらに収納する量によっても金庫のサイズが左右されるのはもちろん、主なリスクが耐火か防盗かをはじめに考えるのがおすすめです。
金庫の性能
耐火・防盗の各性能は、どの程度の基準をクリアしているかも重要です。耐火金庫に関しては、JISの標準加熱試験がありますし、防盗金庫の頑丈さ(対破壊性能)に関しては、日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会が行う防盗試験などが基準とされます。
金庫のロックタイプ
耐火、防盗の性能のほか、最近ではロックタイプの種類が増え、どのタイプを選ぶか使いやすさといった性能に関する検討もしましょう。
さまざまなタイプがあり、使用する場所や用途、使用者などに合ったロック方式を選択できます。
・顔情報が登録された本人しか開くことができない「顔認証式」
・お手持ちのICカードや携帯電話が鍵になる「ICカードロック式」
・指紋情報が登録された本人でしか開くことができない「指紋照合式」
・鍵穴やボタンをなくした「タッチパネル式」
・好みの暗証番号に設定できる押しボタンの「テンキー式」
・操作がむずかしいからこそ開けられにくい「ダイヤル式」
・鍵違いが無制限で複製されにくい磁気を利用した「マグネットロック式」
・鍵を差し込んで開ける分かりやすい操作の「シリンダー式」
・複数の認証方式から好みのものを選べる「マルチロック式」
金庫の寿命(有効耐用年数)は、20年が目安といわれます。使用中の金庫がどの程度経年しているか確認してみましょう。金庫は財産を守るセキュリティ設備のひとつです。移転や収納物を変わった場合などは金庫の見直しが大切です。さまざまな金庫があるので選択がむずかしい場合は、鍵とセキュリティのプロに相談することをおすすめします。
「錠」と「鍵」の表記について
錠前(錠・ロック・lock)は、扉などに取り付けて締める金属、機械的または電子的な部品をいいます。鍵(かぎ・キー・key)は、錠前を施錠・解錠する(操作する)ための器具をいいます。ここでは便宜上、日常的な会話に合わせて、鍵と錠前をまとめて「鍵(かぎ)」と記載している場合があります。