クレセントだけに頼らない、窓の防犯と安全対策
侵入窃盗犯罪で最も多い侵入経路が「開口部」というのはご存じですか。不動産用語でいう開口部とは、採光、換気、通風、通行、眺望などのために設置された窓や出入り口のこと。警察庁の統計によると、この開口部が侵入経路のほぼ9割を占めているようです。今回はそんな開口部、特に窓の防犯と安全対策についてご紹介したいと思います。
警察庁の統計によれば、開口部の中でも窓は、戸建て住宅であれば玄関の5倍近く、集合住宅でも2~3倍、玄関よりも多くの犯罪が発生している箇所です。
その窓からどのような方法で侵入するかというと、侵入方法の2トップは「無戸締まり」と「ガラス破り」。これらも戸建て住宅と集合住宅での発生に傾向があり、低層階ほどガラス破りが多く、無戸締まりは戸建てや集合住宅、階層にかかわらず、まんべんなく発生しています。
ガラス破りのような手荒な方法への対応も必要ですが、まず心掛けたいのは無戸締まり対策。というのも、無戸締まりの心配は防犯面だけではありません。
とくにお子様や高齢者のいるご家庭、もしくは介護施設などはとても重要です。厚生労働省「人口動態調査」、東京消防庁「救急搬送データ」及び「医療機関ネットワーク事業の事故情報」を消費者庁が分析したところ、湿度や室温が高くなる夏ごろなど、換気のために窓を開ける機会が増える時期に、窓が開いた部屋で子どもだけが遊んでいて誤って転落するなどの事故が発生する事例も増えるそうです。
熱中症の心配や感染症対策での換気など、窓を開け放した状態にすることが増えるこの季節、防犯だけでなく事故などにも注意が必要になるのです。
窓の防犯や安全対策として、窓の鍵を考えてみましょう。窓の鍵で思いつくのは、クレセントという窓に取り付けてある締め金具であるという方が多いかと思います。クレセントの名称はそれほど一般的でないかもしれませんが、取っ手の付いた三日月形の金具を回転させ、フック状の金具に引っかけるように締めるものといえば、多くの方が見たことも触ったことも使ったこともあるでしょう。もともとはアメリカの金物メーカーであるクレセント社が大ヒットさせた金物の商品名がそのまま一般名称として通用しています。
ぎゅっと閉めるほどに締まり具合が手に伝わり、防犯面でも安心感を与えてくれそうですが、じつはクレセントは正式には鍵ではなく、さらには防犯用でもありません。手軽さと部屋の気密性を高める目的で付けられる窓用の締め金具です。日常的に使用していて、このクレセントで引き違い窓が開かない状態になるため、鍵として認識されやすいですが、施錠機能のないクレセントだけの窓は防犯面では鍵が存在していない状態です。
たとえば、もしクレセントの周りのガラスを割られたら、窓の外からでもクレセントを操作できてしまう場合があります。これが空き巣などによる「ガラス破り」という手口です。彼らにかかればクレセントだけの窓を開けるのに、1分もかからないといわれ、無戸締まりと合わせて、窓が多くの侵入窃盗犯罪の経路となっている原因のひとつといわれています。
また、クレセントは操作しやすいがためにお子様や高齢者でも手軽に開け閉めができ、誤って開けてしまう・閉め忘れてしまうことも少なくありません。
つまりは窓の防犯性能をアップさせるには、クレセントだけでは不十分なのです。
したがって、窓に元から付いているクレセントだけでなく、玄関同様、ダブルロックが窓にも必要です。そこで鍵と防犯の専門家がおすすめするのは、窓枠に設置する補助錠です。補助錠があれば万が一クレセントを開けられても、さらなる関門になり、防犯性能を高める効果が期待できます。また一定以上、窓が開口しないように制限できるタイプの補助錠であれば、窓を少し開けた状態でもロックができるため、夏場はもちろん、空気の入れ替えが必要な際に、換気しながらも転落防止といった不慮の事故の防止に役立ちます。
その他にも、防犯格子の設置、窓を二重にする、強化ガラスにする、不在時などに窓が開いたことを知らせる防犯アラームや遠隔で操作できるスマートロックを設置するなど、窓の形状や大きさ、位置などに応じてさまざまな防犯・安全対策があります。それだけでなく、窓の近くに侵入の足場になるような常設物は置かない、外や周辺からの視界を遮るような障害物を設置しないなど、窓に近づけさせない工夫も大切です。
窓、サッシの状態はどうか。窓の鍵がかからない、窓が開かない、異音がする、窓枠から外れている、といった窓まわりの故障やトラブル、防犯や安全に関するお悩みについては、鍵と防犯のプロに相談することをおすすめします。特定の補助錠や防犯製品だけでなく、窓の設置場所や自宅、敷地の周辺環境などにも考慮した安心・安全・快適な暮らしに最適な提案をいたします。防犯対策や安全についての配慮がなされた窓から、快適な暮らしを満喫しましょう。