トラブルを未然に防ぐ防犯対策
コロナ禍以降、スタッフの人数を抑えてのコスト削減や感染リスク低減、小規模店舗や直接販売の始めやすさなど、さまざまな理由から無人や非接触型の店舗が広がりを見せています。一方、省力化店舗や無人店舗を標的とした犯罪や迷惑行為による被害も発生しています。トラブルさえなければメリットの多い省人・無人店舗ですが、セキュリティ対策はどのようにすればよいのでしょうか。
トラブルを防ぐことの多大なメリット
万引きや窃盗、無銭飲食といった金品に関わるトラブルだけでなく、不特定多数が出入りする店舗では、店と利用者とのトラブル、利用者間のトラブル、迷惑行為、犯罪の温床となるケースなどさまざまなリスクが考えられます。
ただそれは有人の店舗でも発生しますし、無人店舗に限ったことではありません。しかし、有人店舗では起こりえない、もしくは発生が抑えられるケースも多く、無人店舗だからこその危険性が存在するのも事実です。
そういった無人店舗でのセキュリティを考える際、万引きや窃盗、無銭飲食といった金銭トラブルを考えがちですが、だからといって現金での支払いをなくせばよい、万引き対策だけでよい、というわけではありません。
店側が金銭的な被害や損害を受けないためだけでなく、お客様が気持ちよく、安心して利用できる店舗にすることは、リピーターを増やすことにつながり、事業を成功させるためにも重要です。そういった意味でも、無人店舗でトラブルを未然に防ぐ防犯対策は、欠かせないものといえるでしょう。
どんなリスクがあるか業種から想定する
防犯対策を考える上で、どのようなリスクがあるかを考えてみましょう。リスクは店舗やサービスの内容によって異なります。大通りに面しているのか、閑散とした住宅街にあるのかといった立地の問題や、簡単に万引きできたり、破損するようなものなのかといった商品の性格、物品を販売しているのか役務を提供しているのか、といったサービスの内容などで起こりうるトラブルを業種それぞれ具体的に想定してみました。
スタッフが少なく、店員がいてもワンオペ(ワンマン・オペレーション)であったり、セルフレジが主流となった小規模スーパーでは、人の目が少ないことから万引きや商品へのいたずらといった犯罪が発生するリスクがあります。不特定多数の顧客が出入りすることでもトラブル発生のリスクは少なくありません。
弁当や食品の販売を目的とした店舗は、ここ数年増えており、店舗の広さ、支払いの方法、スタッフの有無・人数、施錠の有無などさまざまな形態で運営されています。このような店舗では、万引きのリスクも高く、現金での支払いが可能である場合は、料金箱の売上金が狙われることなども考えられます。また大きい被害でなくても、さまざまな迷惑行為が発生することは昨今のニュースでもご存じの通りです。
洗濯機や乾燥機が中心のコインランドリーのセキュリティ上のリスクとしては、両替機の窃盗や自動販売機荒らし、洗濯している衣類へのいたずらや窃盗、第三者のたまり場や犯罪の温床になること、利用者同士のトラブル、ホームレスが住み着く、などが考えられます。
増加傾向にある小規模フィットネスジムは、24時間営業や無人店舗である場合が少なくありません。基本的に施錠されており、会員以外は入室できないようになっており、トレーニングマシンは盗まれるリスクの高いものではありません。一方で施錠されていることにより、機器や設備等にいたずらや悪用されて破損するリスク、衣類や所持品の盗難や性犯罪などが発生するリスク、互いに見ず知らずの会員が出入りすることから利用者間のトラブルなどが考えられます。
館内に複数の会議室がある有人の施設ではなく、雑居ビル、オフィスビルの一室だけを時間貸しする小規模の無人貸会議室も増えています。利用料や解錠などインターネットを通じてやり取りされる場合には、金銭トラブルの心配はありません。ただし、施錠された密室であることから、設備や備品の窃盗や悪用、性犯罪の発生リスク、利用時間外での侵入や不正利用といったトラブルが考えられます。
狙われにくい店舗、狙われやすい店舗
防犯を考える上で、トラブルを起こす側からの視点で考えることも重要です。「防犯4原則」はまさにそれです。犯罪者が心理的に嫌う要素を4つの特徴に分類したもので、これらの特徴から防犯対策に落とし込んでいます。これを知ることで、“狙われにくい”店舗を目指すことができます。狙われにくい店舗であることは、トラブルを未然に防ぐことにつながるのです。
不審者は対象物に侵入を試みた際、時間がかかることを嫌います。警察庁の調べによると、5分かかると侵入者の約7割はあきらめ、10分以上かかると侵入者のほとんどはあきらめるといいます。(出典:警察庁「住まいる防犯110番」)
従って、できる限り時間を費やすように侵入を阻止する仕組みが有効です。
不審者が対象物に近づいたときに音で威嚇したり、周囲に異常を知らせるような音を犯罪者は嫌います。異常を検知した際に、大きな音が出る仕組みが有効です。
対象物の周囲を明るくすることで犯罪者は近づきにくくなります。不審者が対象物に近づいた際に、光を発することにより、威嚇することなどが有効です。
犯罪者は監視されることを嫌います。監視されていると思わせることで犯罪を阻止できる可能性も高まります。
以上から、今度は反対に狙われやすい店舗を考えてみましょう。それは上記の防犯4原則を無視、または意識していないことが犯罪者に知られてしまうことに他なりません。店内の人の目が及ばない場所や死角がそのままにされていたり、防犯設備や機器が設置されていなかったり故障したままであったり、扉が開けっ放しや無施錠だったり。意識が低いと当然防犯対策も手薄であることが多く、そういった店舗が狙われる傾向にあります。
未然に防ぐための防犯対策
では無人店舗の防犯対策を具体的にいくつか挙げてみましょう。
・防犯4原則「時間」から、ドアや窓、開口部などの施錠について、補助錠(CP錠)、窓用補助錠や防犯フィルム、防犯格子などでの侵入抑制の強化・補強。
・防犯4原則「音」から、センサー付き警報機、振動検知警報機、防犯ベルなどの導入。
・防犯4原則「光」から、フラッシュライト、センサーライト(外灯、室内灯)などの設置。
・防犯4原則「目」から、定期的な見回り、客の姿が映るモニターや鏡、視線のあるポスターなどの設置、万一迷惑行為が行われた場合に、証拠や特定・捜査に繋がる映像の記録が可能な防犯カメラ(監視カメラ)の導入。
一度トラブルに巻き込まれた店舗は、それが知れ渡り、また別の犯罪者のターゲットになることが少なくありません。危険な店と見なされて、客足が遠のくといったこともあります。犯罪者が嫌う店舗にして、トラブルや迷惑行為を未然に防ぐ意味は小さくありません。
ただし、一般の方が犯罪者の視点に立つのはなかなかむずかしいことかもしれません。そんな犯罪者に対抗できるのは防犯のプロです。私たちプロはそういった情報を豊富に持ち、防犯環境設計や対策の立案も可能です。鍵の交換や建具のメンテナンスといった依頼以外にも、セキュリティ対策で困った時、無人店舗を開く際などお気軽にご相談ください。